生活環境の保全と、
豊かな自然環境の
持続的利用を支える
かつて日本では、大気、水、土壌などの身近な生活環境の汚染が進み、激甚ともいえる公害が問題となっていました。現在では、これまでにとられてきた様々な対策により、環境基準の達成状況などは大きく改善されています。しかし、依然として残された問題も多く、PM2.5や光化学オキシダントによる大気汚染の問題、湖沼・内湾といった閉鎖性水域における栄養塩類の問題、過剰な窒素や有害化学物質による地下水・土壌の汚染、マイクロプラスチックを含む海洋ごみの問題などが、引き続き重要な課題となっています。
自然環境についても、国や地方自治体、企業、市民による環境保全の取組みや、開発行為における環境アセスメントを通じた環境配慮が定着しており、今後もその取組みの重要性は変わるものではありません。しかし、生物多様性の喪失が地球規模で問題となっている現在において、これまで以上に生物多様性の維持・保全に着目した取組みが社会に求められています。
我が国は周囲を海に囲まれ、領海並びに排他的経済水域(EEZ)は世界第6位の広さを有しています。海洋には、豊かな水産資源の他、近年ではレアアースを含む鉱物資源やメタンハイドレートなど新たなエネルギー資源が豊富に存在することが確認されています。このような海洋の資源の開発・利用を持続的に行うためには、環境の保全との調和が必須であり、深海を含む海洋での環境調査手法や予測・評価手法などの研究も進められています。
大気・水・土壌環境などの生活環境の保全
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当社は、環境調査の手法やマニュアルが確立されていなかった1960年代より、専門家の助言を受けながら調査技術の開発を行ってきました。大気質、水質、土壌などの調査に先駆的に取り組み、生活環境の保全を支援してきました。商業地や工場跡地などで土壌汚染が認められた場合には、土壌調査に加え改善施策も提案するなど、計画から対策までを総合的にコンサルティングします。また、国内に留まらず、開発途上国などの環境問題にもグローバルに取り組んでおり、全球的な環境問題である海洋ごみ問題では、マイクロプラスチックの分析手法の開発や、ASEANの海洋ごみ対策の取り組みにも参画しています。当社では、国や自治体による政策検討や施策実施の支援を通じて、よりよい生活環境の実現に貢献しています。
希少種保全や生物多様性の確保
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これまで、海域から陸域までを対象に、生態系の保全・回復や自然再生事業、希少種の保全対策などを行ってきました。生態系の保全・回復では、環境が悪化した海域における魚介類の生息場の再生や水質改善を目的とした人工干潟の造成、事業実施に伴う保全対策としての藻場造成、サンゴの白化現象により劣化したサンゴ礁を再生させるためのサンゴの移植事業などを実施してきました。希少種の保全対策では、猛禽類やトカゲハゼ、ネコギギ、ヒヌマイトトンボなど幅広い分類群を対象に保全対策を実施してきました。これらの対策にあたっては、生息環境の解析技術や、生物の増殖技術、移植技術など、さまざまな技術とノウハウを結集し、当社の総合力で支援しています。近年では、AI技術や環境DNAなど、最新技術も導入し、外来種対策などさまざまな事業に活用しています。
また、近年では政府や自治体だけでなく民間企業でも生物多様性保全を組み込むことが求められています。そのため、行政に対する自然環境保全の政策検討サポートや、民間企業に対する自然資本に関する財務情報開示のサポートを通じ、生物多様性の主流化に向け貢献しています。
持続可能な海洋資源利活用のための海洋環境の保全
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当社では、大深度の海底調査を行える自社開発のホバリング型AUV(自立航行型水中ロボット)を活用し、日本の広大な排他的経済水域に眠る、コバルトリッチクラストやマンガン団塊、レアアース泥などの海洋資源開発に係る環境調査を行っています。また、環境アセスメントを通じて、環境と調和した利活用のあり方に関する検討の支援と、サンゴ礁や藻場の生態系の解明、水産生物資源の管理や保全の支援なども行っています。新たな海洋観測機材の開発や運用などを手掛けながら、国や研究機関、企業による事業実施や研究開発を通じて、持続可能な海洋資源の利活用に貢献しています。
大気、水、土壌、自然環境、生物多様性などの調査・予測・評価技術を活用し、既存の環境問題の解決に貢献してきました。今後も技術開発や研究の成果を応用することで、未知の環境問題への対応と、未来の生活環境の保全と豊かな自然環境の持続的利用に貢献していきます。