プロジェクトストーリー 07
水中ロボティクスで未来につながる
深海生態系を解明する。
- 環境調査
- 環境評価・環境計画
2022.10.20
PROJECT
MEMBER
環境調査事業本部 外洋調査部 S.T
「YOUZAN」の完成が近づいてきたころ、NHKエンタープライズ様より共同研究の話をいただきました。その内容はオーストラリア南西部のブレマーベイ沖合に、夏場だけ大型海棲生物が集結するホットスポットと呼ばれる海域があり、その深海生態系の調査と撮影。ホットスポットではシャチに襲われたクジラが海中に沈み、海底に豊かな生態系を構築しているといいます。その実態を解明するという内容でした。
AUVのPRをどのようにするべきか考えていたタイミングでやってきたプロジェクト。このチャンスを逃すわけにはいかない、なんとしてもAUVを完成させ成し遂げたい。私の胸に闘志が湧いてきました。しかし渡航は約6カ月後と時間がありません。半年でAUVを仕上げて、海外でトラブルなく調査できる状態まで持っていくことが最大の課題でした。
初陣でいきなりハードルの高いミッション。安定した潜航調査ができるよう「YOUZAN」の様々な制御パラメーターやソフトウェアを調整し仕上げていきました。カメラや4kビデオの設定確認、パラメーターの調整やソフトウェアのデバッグなどを繰り返し、海域試験を行います。運用トレーニングについても怠ることはありませんでした。
ブレマーベイ沖合の調査海域は水深1000m程度です。なので、駿河湾の1000m海域で最終試験を行い、実際に水深1000mの圧力下でのAUV性能試験、艇体制御や音響通信、音響測位の検証を行いました。何度もくじけそうになりましたが、試験をクリアし「これで行ける」とようやく私の中に自信が生まれました。
現地でのトラブルは国内と違い、すべて自らの手で対処しなければなりません。そのためソフトウェアのアップデートやAUVの解体、組上げなどの一連の作業も一通り経験して臨んではいました。充電器を復旧させる方法をなんとか考えます。結果、故障したリレータイマーを外してショート回路に組み替えるというアイディアにたどり着きました。これならば充電時間の管理はできないが充電はできる。メーカーから修正回路図を入手し、現地で回路を組み替えてなんとかリカバリーに成功しました。とはいえ充電の問題はクリアできましたが充電時間の管理ができない状況に。そこで調査期間中、メンバーが寝不足になりながら交代で夜間充電対応を行いどうにか乗り切りました。
初めての調査がいきなりの海外。日本と違った多くの経験ができました。調査関係者の皆さんには非常に喜んでいただけ、私たちメンバーもこの上ない達成感を得られました。この調査の様子はNHKの「ワイルドライフ」「NHKスペシャル」「ダーウィンが来た!」などで放映され大好評。「YOUZAN」を様々な方々に知っていただくよい機会となり、これを契機に「YOUZAN」の仕事も増え、現在のAUVを中心とした、水中ロボティクス事業のスタートに繋がったのです。
現在、当社の水中ロボティクス事業は新たな展開を迎えており、人員も増え開発環境も整いつつあります。さらなるチャレンジにより進化したAUVを開発し、社会実装を目指して行きたいと思っています。