プロジェクトストーリー 03
海洋プラスチックごみ問題に
ASEAN諸国とともに取り組む。
- 環境評価・環境計画
- 自然環境の保全・再生・創造
- 化学分析・リスク評価
- 環境保全・創出(海外)
2022.09.02
PROJECT
MEMBER
海外事業部 A.I
海洋プラスチックごみの発生源は陸域が8割、海域2割というレポートがあるように、ほとんどの海洋プラスチックごみは、陸域から発生しています。そのため、海洋プラスチック問題は海域だけではなく陸域の廃棄物処理問題の観点からも考えなくてはなりません。
また、プラスチックの生産や消費なども含めた、総合的な政策についても同時に考慮しなくてはなりません。
2019年には海洋ごみ対策に関するバンコク宣言やASEAN行動枠組など、海洋プラスチック問題への対策が策定されたこともあり、ASEAN各国は自国の取り組みを具体化する必要に迫られていました。そこで、私たちはタイ国天然資源環境省 やその他ASEAN加盟国からの同意のもと、日ASEAN統合基金(JAIF)の承認を経て、国家行動計画策定に向け、ASEAN諸国の海洋プラスチック問題の実態・課題の把握や基本的な枠組みの検討などを始めました。
いよいよスタートしたプロジェクトですが、最初から多くの課題にぶつかりました。タイ国天然資源環境省、ASEAN事務局、ASEANの国々など政府レベルの多くの組織、ASEANに対して海洋プラスチックごみ問題の対処を支援する国際機関など、関係各所との調整に大変苦労しました。例えば、私たちが国家行動計画策定のための基本的な枠組みについて検討を開始したころ、同時並行で世界銀行がASEAN地域行動計画の策定を進めていることが分かってきました。また、私たちがASEAN各国によるワークショップを開催する計画を立てていたところ、世界銀行でも同様にワークショップを企画しようとしていたことが判明しました。つまり両者ともに取組みの柱になる内容を同時期に模索していたのです。世界銀行と協力しワークショップなどを共同開催すればメリットは大きい。しかし双方でそれぞれ進めるとASEAN内で混乱を招きかねません。そのため世界銀行や関係各所と丁寧な意見交換を重ね、両者の整合性や関係性を踏まえながら難易度の高い調整をする必要がありました。そして各機関の役割分担や開催内容・プログラムの調整、費用分担などの調整を乗り越え、ASEANの国や地域から所掌の担当者をバンコクに招聘。世界銀行とのワークショップ共同開催を実現しました。このような政府レベルでのワークショップを実現できたのは私たちにとっての大きな成果であり、この上ない達成感を味わうことができました。
現在はその次のフェーズとしてベトナム社会主義共和国天然資源環境省 のイニシアティブのもと、IGES(財団法人地球環境戦略研究機関)とともに、ミャンマーとカンボジアを対象とした国家行動計画の策定や、両国を中心とした廃棄物管理能力向上のためのデータ収集トレーニングの実施を進めています。例えば、ASEANの国や地域では廃棄物やリサイクルに関する統計データの不足や正確性などに課題があります。そのため、過去に行われた調査データの精査や、今後の効果的な調査手法の選定などについて議論を重ねています。先方政府の思惑や期待に対して、日本が持つ知見や得意とする施策でどのように応えていくか、高度な調整が求められています。