プロジェクトストーリー 06
災害対応、それは短い時間と
総力を結集した戦い。
- 国⼟保全
- 交通・物流基盤
- 都市・地域づくり
- 災害への対応と復旧・復興
- 防災・環境・建設システム開発
- 気象・防災・生活情報サービス
2022.10.20
PROJECT
MEMBER
国土保全事業部 水工部 Y.F
災害対応には乗り越えるべき大きな壁があります。それは時間との戦い。堤防の調査や被災要因の究明、復旧工法の検討は短時間で行わなければなりません。
今回は前年7月の西日本豪雨災害での経験が活きました。当時の対応から得たノウハウを踏まえ、いであ本社社会基盤本部に「令和元年台風19号災害対策調整室」を設置。全社をあげて人員や機材の配置をすることで、迅速な対応を行うことができました。災害の発生が10月13日で支援要請が17日。私たちは、19日(土)~21日(月)の僅か3日間の間に、千曲川52km~89kmの両岸総延長約70kmの広い範囲の被害状況について、徒歩で調査を完了させたのです。現地調査では河川の氾濫により散乱・滞積した土砂や雑草の影響により思うように調査が進まず、時折降りしきる雨も目視調査の妨げになるなど、現地ならではの苦労も多くありました。また被害状況の報告は、住民の安否や避難、生活などに直結するため一刻を争います。毎日事務所に出向き、被害状況を報告。さらに夜遅くまで、その日の結果のとりまとめを行うなど、この時ばかりは調査人員(5班×4名の20名)による対応が昼夜問わず続きました。
堤防調査委員会では現地見学会のための資料作成を計4回手がけることに。一般公開される重要な資料です。私は過去の災害対応の経験を活かして、発注者・関連業者との連絡や資料作成の全体指揮を行い、管理技術者として委員会に提示するすべての資料をまとめました。さらに、堤防調査委員会資料に加えて最終的に一般公開される千曲川堤防調査委員会報告書も短期間のうちにまとめあげます。特に第2回と第3回の堤防調査委員会の資料は期間が1ヶ月しかないというハードなスケジュールでした。多くの人のチェックが入るため発注側の担当課長と四六時中連絡を取ることを心がけ、なんとか間に合わせることに成功。とても過酷な日々でしたが、無事に完了した後、感謝の言葉と事務所長の表彰をいただけたことで一気に苦労が報われました。
堤防は河川などの氾濫を抑えるため、その両岸に土砂を積み上げて造られた構造物であり、氾濫時の越水に対して脆弱であることが分かってきています。しかしながら、越水による堤防決壊のメカニズムは十分に解明できておらず、その対策のノウハウは確立されたものではないのが現状でした。したがってこの堤防強化の工事は従来の堤防工事と違い、確立された知見がない中、越水に対して強靭な構造をもつ堤防を整備することを求められたのです。私たちは古い論文から最新の論文に至るまで多くの資料を手当たり次第に入手し、様々な検討を行い、学識者を含む堤防調査委員会の委員の方々にも相談し、試行錯誤を繰り返しながら工法を検討。ついには全国で初めてと言えるほどの、しっかり評価していただける提案にまで高めることができました。
翌年の2020年7月にも熊本県で球磨川豪雨災害が起きており、洪水や土砂災害は毎年のように発生しています。今後は気候変動や地球温暖化などで大雨や洪水の発生頻度のさらなる増加が予想されており、想定以上の自然災害が頻発する可能性があるでしょう。災害対応は現場で調査をする多くのスタッフや多様な専門技術者、多くの知見を持つ災害経験者など幅広い人的資源が強く求められます。現場では、多くの人員のための宿泊施設確保にも大変苦労しました。災害時は緊急で対応を求められます。全国の拠点から応援部隊を呼び、会社の総力を挙げた対応で乗り切らなければなりません。プロジェクトに携わった被災地区が復旧する姿を見ると、いつも苦労した体験が脳裏に浮かびます。災害対応は社会貢献に直結する、とてもやりがいのある仕事。私はこれからも会社のメンバーと協力しながら、安全・安心な社会の実現に向けた取り組みを行っていきます。