プロジェクトストーリー 05
住民参加型の安全・快適な環境にやさしい“道づくり”。
- 交通・物流基盤
- 都市・地域づくり
2022.09.02
PROJECT
MEMBER
道路橋梁事業部 道路部 H.Y
近年の道路整備事業は、車だけではなく人や自転車など、利用するすべての人が安全で快適に利用できる空間整備と、周辺の住環境にやさしい道路整備が求められています。私が手がけているのは、そういった道路整備の設計。今回お話するのは調布保谷線を担当した際の事例です。
調布保谷線は両側に10mの、植樹帯や歩道、副道などの環境施設帯を有する、幅36m、長さ約14kmの道路です。整備の目的は東京都・多摩地域の南北方向の幹線道路ネットワークとして、都市間連携を強化するため。加えて交通の円滑化を図ることが目的でした。また、鉄道との立体交差化に伴い既存の踏切を撤去。車道は地下へと潜らせ、歩行者と自転車は地下通路やエレベーター併設の歩道橋を利用することで、踏切待ちのない安全な道路をつくることでした。当社では調布保谷線(西東京区間・Ⅰ期区間)の道路やアンダーパス、電線共同溝、雨水排水設備、電気・機械設備といった諸々を、基本設計段階から詳細設計段階まで手がけることになりました。
まずは住環境の課題について。環境施設帯の構成要素である植樹帯、歩行者通行帯、自転車通行帯、副道の組み合せや植樹する木の種類などについて、地域住民の方々から広く意見を募り、道路の幅員構成を決定しました。沿道乗入れの要望が多い地区は副道タイプ、緑化を希望する地区は緑地タイプを基本に整備しました。緑地タイプの横断構成は、歩行者の安全性に対する地域住民の意識が高く、自転車と歩行者を植樹帯で物理的に分離する構造を採用しました。
また地域の分断については道路整備後にもともとひとつだった地域ができるだけ分割しないよう、信号交差点と単路の横断部などの配置間隔について、できるだけ道路を横断する際の迂回が少なくてすむように整備方針をまとめていきました。鉄道との立体交差は地下通路を整備する予定だったのですが、夜間の防犯面を気にされる住民の意見もあり、地下通路のほかに横断歩道橋も併設する計画とし、バリアフリー対応でエレベーターも併設しました。このエレベーターは自転車も搭載できるサイズを採用。歩道橋は沿道居住者のプライバシーに配慮し、目隠し板を設置するなど、かゆいところにも手が届く設計を行いました。
景観への配慮も忘れません。植樹帯の樹種はシンボル的な樹木、地域を象徴する樹種、アンケートで人気の高い樹種を中心に選定し「緑豊かな道路づくり」をコンセプトに整備しました。歩道橋のデザインはコンセプトとの親和性を考え曲線を多く取り入れ、主桁の色は住民の方々に意見を伺いながら決定しました。地下通路は車道と歩道の間にスリットを設けて閉塞感を減らすデザインに。イメージパースや模型を作成し、沿道住民に理解していただける工夫を行いました。苦労した点は、沿道住民の方々が様々な意見をお持ちだったため、その意見の調整に追われたこと。結果的にご要望に沿えなかった沿道住民様には個別に丁寧な説明資料を作成し、行政の方から住民へ説明していただきました。