当社が携わったモーリシャス国統合的沿岸域生態系管理システム構築プロジェクトに関する記事がJICA『自然環境だより』に掲載されました

  • サービス・技術
2024.07.25
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業務主任/生態系保全・回復 佐々倉 諭(いであ株式会社) マングローブ保全・回復 松井 直弘(国際航業株式会社)

モーリシャスはインド洋西南に位置する島しょ国です。人口126万人、国土面積2,040k㎡でモーリシャス島を始めとした島々で構成されており、美しいサンゴ礁、海草藻場やマングローブ林等の豊かで多様な沿岸域生態系が存在しています。これら生態系は観光業や水産業等の主要産業の基盤として島民の生活の支えとなっています。しかしながら、これら沿岸域生態系は気候変動、沿岸開発、土砂流出、外来種侵入などに脅かされています。

本プロジェクトは、より健全で強靭な沿岸域生態系の実現に向けた保全・再生のための能力向上を目的として、2022年5月から2027年8月にかけて、ブルーエコノミー・海洋資源・漁業・海運省を主要なカウンターパートとして、政府機関、大学、地域住民、NGOなど様々なステークホルダーと連携して実施しています。本稿ではプロジェクト活動のうち、マングローブの保全・再生について紹介します。

モーリシャスの2020年におけるマングローブ分布面積は4.32k㎡で、1996年と比較して1.21k㎡減少したと報告されています。減少要因としては、薪炭材や建築資材としての違法伐採、沿岸開発や航路確保のための伐採などが報告されています。

プロジェクト対象地域の北側では、海岸浸食対策として護岸工事が実施され、マングローブが減少しました。マングローブには風や波の減衰や土砂堆積効果があるといわれているために、プロジェクトでは劣化した生態系の再生だけでなく、生態系を活用した気候変動適応としてマングローブ再生を行っています。2023年10月には地元の漁業者と連携して、約300本の苗木の採取と植栽を行いました。風や波が強い地域のため、苗木を竹の支柱で固定したり、網で囲ったりなどの工夫を行いました。しかし、サイクロンの時期には強い波と、海藻類漂着の影響により生残率は芳しくありません。穏やかな地域でのマングローブ植栽はモーリシャス政府やNGOによって実施されているため、本プロジェクトでは、気候変動による海面上昇や大型化が予測されるサイクロンの影響を受けやすい地域でのマングローブ再生に向け、優良事例を参考に新たな技術導入を検討しています。

また、本プロジェクト地域には、Pointed'Esnyというラムサール登録湿地があり、ここでもマングローブが経年的に減少しています。減少要因として周辺のサトウキビ畑での地下水利用による流入水減少や海岸道路開発にともなう海水の遮断による影響なども考えられますが、理由は明確ではありません。そのため、本プロジェクトでは、観測機器をモーリシャス政府に供与して、高精度GPSによる地盤高測定、土壌分析、健康・不健康なマングローブの光合成量の比較、外来種の侵入状況調査など、科学的に劣化要因を解明するための調査を実施しています。

モーリシャスではオオバヒルギ(Rhizophora mucronata)とオヒルギ(Bruguiera gymnorhiza)の2種類のマングローブが記録されています。本プロジェクトを通じて、これまで未記録であったサキシマスオウノキ(Heritiera littoralis)を発見しました。現在、政府機関や大学と連携して、第3番目の種としてモーリシャスのマングローブリストに追加する手続きを行っています。

本プロジェクトはマングローブの他、サンゴや海草の保全・再生、管理体制能力強化、エコツーリズム、環境教育に関する活動も実施しており、これらの活動を通じて、モーリシャスの沿岸域生態系の保全・再生と持続可能な利用の推進に向けて取り組んでまいります。

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