【新聞記事】コウモリ類 海域活動状況を把握/洋上風力の環境アセス展開/いであ
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いであは、船舶と定点観測用の小型ブイを使った調査によって海域でのコウモリ類の活動時期と利用形態などの把握を可能とする新たな調査手法を確立した。脱炭素化に向け洋上風力発電事業が活発化する中で海域での飛翔(ひしょう)性動物の実態に関する知見は不足しており、適切な環境影響評価手続きに役立つ技術としての展開を目指す。
同社は、環境省から受託した海域環境調査業務として、山形県遊佐町沖の水深10-40m海域でコウモリ類調査を実施した。洋上定点調査として、コウモリ類が発する超音波を録音できるフルスペクトラム式の自動録音機を係留した小型ブイに固定し、5、6月と7、8月、8、9月にそれぞれ31晩録音したほか、洋上ライントランセクト調査では、調査海域に設定した3側線を船舶で航行しながら2晩録音した。
録音機の周波数はコウモリ類の音声周波数特性を考慮して設定。録音した音声は専用の解析ソフトで6グループに区分し、海域を利用するコウモリ類を推定して、その利用状況を整理・解析した。
洋上定点調査の結果では、8、9月に多く音声が記録されており、グループ別では長距離を飛翔する種を含むグループが多く海域を利用することが分かった。記録された四つのグループのうち、三つのグループで採餌(さいじ)時に発する音声が含まれており、海域を飛翔するだけでなく、採餌していることも明らかになった。気象条件との関係では、単位時間当たりの音声の記録回数が秒速4mまでの風速の弱い条件下で多い傾向が見られ、秒速6m以上の風が強い条件下では音声は記録されていなかった。
これらにより、同海域では8、9月にコウモリ類が多くなるとともに、えさ場としても海域を利用していることが把握できた。
海外の洋上風力発電所では、コウモリ類が風車に衝突するバットストライクの事例が報告されている。鳥類によるバードストライクより割合は低いと考えられるものの、コウモリ類は希少種に指定されている種が多く、個体群への影響が大きいことが懸念されている。わが国でもコウモリ類の動向を把握する必要があるが、海域でのコウモリ類の分布状況を詳細に調査した先行事例はなく、調査手法も確立されていなかった。
同社は現在、海域でのモニタリング手法としての活用を想定して改良を加えるとともに、洋上風力事業の今後の展望を注視しながら、同技術の活用範囲や海域を広げるための検討を進めていく。