【新聞記事】オープンイノベーション大賞 農林水産大臣賞受賞 いであ
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建設・環境コンサルタントのいであ(株)などが、内閣府主催の「第6回日本オープンイノベーション大賞」で農林水産大臣賞を受賞した。自律型無人潜水機(AUV)の高度活用で、水深約250メートルの保護礁内に生息するズワイガニの可視化に成功。資源量推定の精度向上や魚礁の効果検証に有効な調査ツールだと検証できたことを受け、14日に内閣府で表彰された。
きっかけは福井県水産試験場が抱えていた、ズワイガニ水揚量の減少という課題だった。対策として若狭湾に保護礁を整備し魚礁を設置したほか、海底に溝を掘る作澪で稚ガニの保護にも努めている。だが増殖効果を確認したくても魚礁が障害となり、調査用のトロール網をひけない。遠隔操作型無人潜水機(ROV)も有線ケーブルが引っ掛かり、状況を検証できずにいた。
そこで、ホバリング型AUVを使用する調査をいであが提案した。コントローラーと機体をつなぐケーブルは不要で、あらかじめ設定した高度(海底からの距離)と緯度・経度を自律走行できる特徴をもつ。国土交通省の2021年度事業に採択され、実証実験を開始した。
その結果、保護礁と作澪にズワイガニの姿をとらえた。画像解析で雌雄を判別できたほか、トロール網では採捕できない甲幅3センチ以下の稚ガニも確認している。漁業者からの反響も良好だった。
AUVのメリットはほかにもある。水中測位の精度が高く、同じ場所を繰り返し調査する再現性と、対象物の生息位置の把握に優れる。直接資源と海底に触れない環境インパクトの低さや、調査船の用船が不要な費用対効果にも優位性が高い。
課題もみえてきた。高度を一定に保つようプログラミングされたAUVが、航路の正面に現れた魚礁の外壁を垂直移動で回避し、航行を再開できても、中空構造の内部へ潜航してしまう可能性だ。
21年度の調査では福井水試が把握する海底地形に基づき、魚礁を回避できる航路を進んだ。だが水試からは、魚礁を安全に回避し、その際に魚礁の埋没洗堀や蝟集状況を確認したい要望も出ていた。
複雑で不安定な地形にも対応できるよう、ソフト面を改良。比較的浅い海域で目視を交えながら、安全を確認している。
この成果も受け福井水試は、社会実装に向けたトロールと調査の比較検証を希望しているそうだ。いであ環境調査事業本部外洋調査部の高島創太郎部長は、「両者の組み合わせで効率よく、高精度の資源量推定に貢献したい」と意欲を示した。
なお、日本オープンイノベーション大賞は共同実施者として参画する福井水試、東京大学、九州工業大学、(株)ディープ・リッジ・テクとともに受賞している。