【新聞記事】ロボット、AI活用 橋梁点検を高度化/現場状況に応じ積極提案/いであ
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いであは、近接目視が困難な橋梁の点検にロボットとAI(人工知能)画像解析などの新技術を積極活用している。仮設足場設置による点検方法と比較して確実に損傷状況を把握できることに加え、労力や費用を大きく低減できることも実業務で確認している。従来の手法にとらわれず、現地の制約条件に応じて多様な技術を組み合わせた適切な点検方法を提案することで、橋梁点検業務の高度化に貢献していく。
橋梁の定期点検は5年に1度、損傷の有無や進行などの状態把握を技術者の近接目視で行うことが基本とされているが、近接が困難な橋梁では損傷を確実に把握できないケースがある。さらに仮設足場での作業に伴う安全性のリスクや労力、費用の増大なども課題となっている。
このため、同社は2021年度に受託した橋梁点検業務で、近接目視が困難な谷あいに位置し、沢をまたぐコンクリート橋に、ロボットとAI画像解析を活用して、その効果を確認した。
竣工後24年を経過したこの橋梁は、上部に道路上の積雪を防ぐための覆工(スノーシェッド)が設置され、前後はトンネルとなっている。桁下高が8mと高く、桁下は沢のため、地上からはしごや高所作業車で近接できず、覆工が障害となって橋梁点検車も適用できない状況にあった。
仮設足場を設置した5年前の前回点検では、労力・費用や安全性のリスクに加え、近接可能範囲も仮設足場を設置した桁の中央4m程度に限られて大部分が近接目視できず、足場資材の搬入時・撤去時は橋梁を含むトンネル区間1.5㎞の道路規制が必要になるなどの問題があった。
今回の業務に当たって、同社は国土交通省がまとめた『点検支援技術性能カタログ』をもとに点検方法を検討。狭あい箇所での衝突の危険性からドローンは使用せず、カメラを搭載したロボットが橋梁の桁下に張り渡したワイヤに沿って移動しながら撮影する、落下の心配がない「ワイヤ吊り下げ型目視点検ロボット Rope Stroller」を選定した。
姿勢センサーを搭載することで対象に正対して撮影できるのも特長で、撮影したコンクリートの表面画像からAI画像解析でひび割れを検出。これをCADに書き出し、ひび割れの位置や形状が分かる図面を作成した。
仮設足場設置による点検と比較すると、仮設・交通規制のリスクがなく、全体の損傷状態を確実に把握できた。労力も5日間で15人を要したのに対して、ロボットと撮影ソフトの操作者2人で作業日数も2日間と6割減となり、費用も220万円から110万円と半減した。AIが損傷図を自動作成するため、内業の効率化も図れるなどの効果を確認した。
同社は、高橋脚や河川をまたぐ橋梁などにドローンとAI画像解析、低桁高で人の進入が困難な橋梁や橋座周辺など狭あい箇所では狭あい部点検ロボットによる撮影、橋梁水中部基礎の洗掘をモニタリングする場合などは水中3Dスキャナーによる水中構造物の形状把握など、近接目視を代替でき、費用や労力の削減効果があると判断できるケースでは、状況に応じて新技術を組み合わせた点検方法を今後も積極提案していく考えだ。