【新聞記事】いであ/外洋調査強化へ本部/AUV活用し水中可視化
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いであが、外洋調査のニーズ拡大を見据えて体制を強化している。4月に新たな本部を新設。AUV(自律型無人潜水機)を活用しながら、環境の調査や予測、影響評価などをワンストップで展開してきた強みをさらに伸ばす。6月には、AUVで浮体式洋上風力発電施設を点検する実証実験が、内閣府の事業で採択された。AUV活用拡大を目指す政府らの動きに歩調を合わせながら研究開発を加速し、2030年の「水中部保守点検サービスプロバイダー」(同社)としての事業化を目指す。
AUVの社会実装に向けては、政府が23年12月に戦略を決定。30年までをめどに海外展開も可能なAUV産業を育成する目標を掲げた。こうした動きも踏まえ、4月1日付で「外洋調査事業本部」を立ち上げた。
柱の一つが水中ロボティクスだ。内閣府総合海洋政策推進事務局によるAUV利用の実証事業公募で、いであ・戸田建設・東京海洋大学・九州工業大学による共同実施体の提案が採択された。長崎県五島市で稼働中のスパー型浮体式施設「はえんかぜ」を対象に、いであのホバリング型AUV「YOUZAN」で水中目視点検を実施。AUV位置制御システムなどの適用性を検証する。
YOUZANは最大潜航深度2000メートルまで対応し、最大8時間調査できる。水中音響測位でリアルタイムに自己位置を測定し、障害物も自動回避する。国内の設計・製造でメンテナンスも容易だ。ただ現状では環境調査に特化している。いであの峯岸宣遠常務執行役員環境調査測定事業本部長兼外洋調査事業本部長は「浮体式洋上風力の点検への活用には多岐にわたる開発が必要だが、実現しないと目指す将来は来ない。AUVの可能性を見せていきたい」との姿勢で臨む。
漁業や資源の海洋開発などに向けた外洋調査が、同本部のもう一つの柱となる。排他的経済水域(EEZ)や遠隔離島、深海部の見える化が求められており、沖ノ鳥島周辺海域の海底地形や生物相調査など近年は業務が増えている。ワンストップでの環境調査のコンサルティングや、施設の点検・維持管理のニーズはさらに高まるとみている。
同本部はAIを含めた社内の技術も融合させながら、顧客ニーズに応えていく。高島創太郎外洋調査事業本部副本部長兼外洋調査部部長は「AUVを多面的に活用することが必要だ。メーカーではなく、コンサルタントとして実装しながら使える技術にできることが大きなメリット」と話す。
本部の新設を、海洋調査分野にさらに注力する企業姿勢を社内外に発信する契機にもしていく。他分野の技術者の採用を含めて人員強化も図っていく方針だ。